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君がくれたもの。
夏の終わりといいますか、この時期になると思い出すこと。

大して面白い話でもないですし、相当マニアックな話ですが。
興味がおありの方はどうぞ読んでみてください。

この歌でも聴きながら読むと、多少風情が増すかもしれません。
増さないかもしれません。

中学生のときでした。

もう当時の僕はといえば、おニャン子大好き。

でもそんなに小遣いもないものですからね。
とてもじゃないですがグッズなどは買えず、夕やけニャンニャンを
視聴する程度。

標準服にカラーもしっかり装備するような、もうどこにでもいるような
中学生だったわけです。マニアでしたけど。お金のない、清貧マニアだった。

ある初夏の給食時間。
僕は相変わらず、給食を食しながらいささかの妄想を交えつつ、いかに
おニャン子というユニットが画期的かつ素晴らしいかを、友人たちに
力説しておりました。

まあ、大部分聞いてなかったでしょうし、おそらく周囲の女子たちはドン引き。
当然モテない。カバンの中に若干エロスな本を入れられ、教科書と間違えて
大いに驚愕する様を楽しまれるような、もうどこにでもいるような中学生
でした。

その日の昼休み。
M君という同級生がいたのですが、彼に

「たのさん(仮名)、今日僕んちに遊びに来て見ない?」

と誘われました。

M君というのは、クラスではあまり目立たないタイプの子でして。
僕もあまり話したことがなかった。
というかほとんど接点がなく、何故僕を誘うのかが分からない。

返事に困っておりますと、

「大丈夫。絶対たのさんは楽しんでくれると思うから」

と、普段の姿からは想像できないような力強さ。
その力強さにある意味気おされた僕は、M君宅にお邪魔することになった
のです。放課後の水泳部をぶっちぎって。

M君の家ってのは結構大きくて、二階の彼の部屋はかなり広かった。
聞けば一人っ子らしく、今思えば親の愛情を一身に受けていたのでしょう。

部屋に入るなり、僕は歓喜の声を上げた。

「すげえぇ!!!キン肉マンが全巻揃ってる!!読んでいい??」

と、早速キン肉マンがプリンスカメハメに瞬殺される様をむさぼり読もうと
する僕に。

「違うよたのさん。キン肉マンでいいの?たのさんに見せたいのはこっち
だよ」

と、M君はのたまった。

なんだよ、こっからキン肉マンが108の必殺技を覚えるんじゃないか。
と、いささか不機嫌に顔を上げますと。

彼が開けたクローゼットの中には、なんかもう。
ビデオやら、写真集やら、ライブのグッズやら。

煌くばかりのおニャン子グッズたちが並んでおり、さながらおニャン子
コーナー的な大盛況を呈しておりました。

すぅうげええええ!!!!!!!

もうね、それから僕は祭りですよ。
今までみたことのないようなビデオとか、こニャン子クラブの会員証とか、
ファンだった高井麻巳子の写真集とか、ぜ〜んぶおニャン子とか、そんなのを
全て見放題。

夢のような時間ですよ。ホントに感動のあまり少し泣きましたからね。
M君最高。

M君は
「オレ、部活とかやってないから。たのさん来たかったら、いつでも来ていいよ」
とか、剛毅なことを言ってくれましてね。

僕もここぞとばかりに、もうむさぼるようにM君ちに通い続けた。
水泳部もぶっちぎりますし、勉強とかなにそれって感じ。

M君ともね。最初は正直な話、おニャン子目当ての打算的な付き合いだった
感があるんです。もうホント僕いやな人間なんですけど。

でも、通い続けているうちに、それなりに打ち解けてきまして。
最初は高井だよ!我妻だよ!とか、おニャン子の話しかしてなかったんです
けれども、次第に将来の夢とか、そんなことも語り合う仲になっていって
たんですよ。もちろんたまにはキン肉マンも読んでた。

そして、夏休み。
その日も僕は部活を終えた後、足取りも軽くM君の家に向かいました。
さすがに行かないとクビになる感じもあったし。

…あれ??

M君ち、一階で商売してたんですけど、いつもあいてるはずの店が開いてない。
店の前には、何人かの人たちがなにやら待っている。

そのうちの一人が僕に気づき、
「君はここの子の友達か何かかい?」

子供ながらに何か雰囲気が違うのが分かった。
「いや、違います!」

慌てて答えると、僕は踵を返した。

家に帰ってからも、状況が理解できず。
必死に中学生なりに把握しようとしたのですが、それもならず。

方便とはいえ「違います!」と断言した自分に、なんだよM君ちにあんなに
通っておきながら、友達だとも言えないのかよ。彼とのつながりはおニャン子
だけだったのか?それだけが目当てだったのか?などと言う、それまで感じて
いたかすかな良心の呵責から来る自己嫌悪を感じたりで、ひたすら呆然としていた。

夜食事を取っていると、玄関のチャイムが鳴った。

「お友達がみえたよ!」

母が僕を呼ぶ。

行ってみると、M君だった。
横には、いつもお菓子を出してくれていたM君のお母さんが立っていた。

…お母さんと来ることないんじゃないか?

どうしたの?
と声にしようとする僕よりも先に、M君が口を開いた。

「ごめんね。もう家に来てもらえなくなった」

…??

理解できず立ち尽くす僕に、M君のお母さんが続ける。
「すいません。急なんですけど、引っ越すことになったんですよ」
「え?でも、学校でそんな話なかったですよ?」
「ゴメンね。皆に挨拶も出来ないんだけど、よろしく言ってね」

母は何かを感じ取ったらしく、
「それは大変ですね…」

などと応対している。

ひたすら立ち尽くすしかない僕に、M君は
「これしか持ってこれなかったんだけど」

と一冊の本を差し出した。

それは、僕が彼の家に行くたびに読んでいた、高井麻巳子の「ソレイユ」という
写真集だった。

「え?いいの?」
彼の予想も出来ない行動に、とっさに声も出なかったのだが。

「もらっておいてよ」
と彼は言うと、お母さんに急かされて

「ありがとう、挨拶しておきたかった。たのさんはどうだったか分からないけど、
僕は楽しかった」

と言い残した。

慌てて追いかけると、外には車が待っていて。
運転席で待っているお父さんが、二人を急かしていた。

会釈もなく、車は走り去っていった。

家に帰ると、玄関には「ソレイユ」が置かれていて。

それを見ると、様々な感慨が急激に襲ってきて、もう耐え切れなかった。
玄関で「ソレイユ」を抱いたまま、僕はひたすら泣き続けた。

「僕は楽しかったから」

それを口にした彼の思いは、一体どうだったのだろう。
彼にとって僕は、どんな存在だったのだろう。

たった一言。

「僕も楽しかった!」

と、大きな声で言えれば良かった。

僕にとって、彼はなんだったのだろうか。
僕はなんていやな人間だったのだろうか。

しばらく、M君との思い出が僕の心を締め付け続けた。

その後、両親の話を聞いたりして、彼がどのような事情で去っていったのかを
少しずつ理解することになった。

商売というのは厳しいものだ。
大人の世界は厳しいものだ。

子供は、その厳しさの前には無力なのだ。

いろんなことを、M君との数ヶ月は教えてくれた。

そして、相手に伝えたい気持ちは、その場で伝えないと。
一生伝えられないこともあるんだ。

古くなった「ソレイユ」を見ると、そんな思いを新たにするのです。












って、綺麗におさまったっぽいですけど。
この話、後日談があるんです。
気が向いたら、またの機会に。
カテゴリ:昔話 | 01:13 | comments(6) | trackbacks(0) | - | - |
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コメント
どうも。元・こニャン子クラブ会員で元・自営業者のNOBUです。

後日談が気になるとこではありますが、まさに「secret base」の世界ですね。

>商売というのは厳しいものだ。
>大人の世界は厳しいものだ。

全くその通りであります。
| NOBU | 2008/09/12 10:31 AM |
本気で涙出ました・・・・・・うー

今、この年齢だからというかそういう子供には理解しがたい状況が解っているから出てくる涙なんだなぁ・・・

いい出会いしましたねぇ〜


その後日談、この涙をどこにやればいいの?的なモンだったらバクスタ乗り込みますよww
| 高菜 | 2008/09/12 12:01 PM |
NOBUさん。
こニャン子。いい響きです。
息っ子じゃなくてよかった。

あ。元自営業だったんですね。
うちは現在自営業ですが、やはり厳しい。

子供にはどうしようもないわけで、うちの子供には
そんな思いをさせないよう、頑張っております。

高菜さん。
大人になって思い起こすと、当時とやはり風合いが
違ってくると思うんですよね。

親の無念もあるし、子供の辛さもある。
もちろん、自分で商売してなくても、会社勤めして
いても同様のリスクはあるんですよね。

うん、おニャン子から相当飛躍しましたけども。

後日談ですか。
うん、バクスタでお会いしましょうむしろ。
そんな話です。
| たのさん | 2008/09/12 3:51 PM |
思い出につき物のSONG!
おニャンコって小学生の頃でしたっけ?
私は原宿でトレーナー買った記憶が・・・(ーー;)
| いってつ | 2008/09/13 9:26 AM |
久しぶりッス、ごーです。

なんかええ話やなぁ・・・。
それも広い意味で思い出やね。
| ごー | 2008/09/13 4:32 PM |
いってつくん。
僕が中学のときに解散したので、いってつくんは小学生
だったと思いますよ。

ああ、原宿!
どんなトレーナーかすぐに想像がつくねえw

この歌は。
そんな経験ないのに、なんかせつなくなるな。

ごーさん。
お久しぶりです。
お子様は元気でしょうか?

いい話でしょ?
いい話っぽいでしょ?

その後の話を聞いて、感想がどう変わるかお聞かせ
下さい^^
| たのさん | 2008/09/13 6:16 PM |
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